能面として一般によく知られている、又は、目にした事がある、又、メディアの中で、写されている物の中で、女性の顔や鬼の面が挙げられると思われますが、その中の一部をご紹介しましょう「能面の様な顔」などと言う表現をよく耳にしますが、女性を表す能面にもいろいろあります。
若女(わかおんな)

若い女性の面。シテに用いる一番使用頻度の高い面といえる。能楽のもつ幽玄の美を表現する、鬘物(かづらもの 女性の役 がシテ)の演出として若い女性の表情で象徴されています。
小面(こおもて)

若女よりも、更に若い女性を表現します。「小」とは、かわいらしいとか、若いとか、あるいは、優しく美しいということを意味しています。若女よりも少しふっくらした表情。かの豊臣秀吉は、室町時代の作品、「小面」を三面手に入れ、若さと華やかさの順に「花の小面」「月の小面」「雪の小面」と名付けて愛玩したといわれています。
深井(ふかい)

中年の女性の顔を表現しています。頬がやせ、口元にしわが入り、少し下がってきています。目もやや伏目がちです。子供を失った母親や、主人と離れてしまった人妻などに用います。
増女(ぞうおんな)

神や仏の相(そう)の面だといわれています。額も長く、頬の肉付きが引き締まり、鼻筋も細くどちらかというと「ほそおもて」な顔になっています。口元も若い女面とは反対に、両端がやや下がり気味です。明るさや、愛らしさは見えませんが、全体的に崇高な品位があり顔立ちも端正です。
主に女神、天女、神仙女に用いられます。
十寸神(ますかみ)

この面も増女と同様、女神を表現しますが、崇高な増女より、活動的な女神と言えます。又、時には、この神がかり的な表情の中に、狂相すら感じられる部分がある為、女神ばかりではなく「蝉丸」の逆髪や「玉葛」といった人にも用いられます。
泥眼(でいがん)

「海士(あま)」や「当麻(たえま)」といった、役シテが、龍女や菩薩になって登場する際に用いられます。女性が成仏して菩薩となったときの相貌を表した面です。眼(白目の部分)に金泥を施してあることがこの名の由来となっています。又、そのことで、超人間的存在を表現しています。歯にも金泥が施され女神としては口元が引き締まり、髪も少し乱れ妖気のただよった、かなり険しい表情になっています。この険しさが女性の生霊の面としてふさわしいと同時に、龍女や菩薩の美しさと品のよさをも持つ為「葵上」の前シテ(六条御息所)に用いられます。
般若(はんにゃ)

名前と顔が一致する能面としては全国一位ではないでしょうか。ごらんの通り、鬼の面です。果たしてこれは男性でしょうか?女性でしょうか?(物の怪に性別?)
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